アラビアン=ナイト
平塚武二 文
小学館, 1965
お話じょうずなシャーラザッド
(9) つぼ裁判 PP133-142
1.ゴージャのつぼ
2.裁判ごっこ
1.ゴージャのつぼ
登場人物:
アリ・コージャ (独り身の商人)
商人 (コージャの友人)とその妻
2人の商人(メッカ←→エジプト)
隊商 (エジプトへ行くまでに仲間に入れてもらった)
登場動物:
らくだ
地域:
バグダッドの都 (主人公の居住地)
→メッカの町→アラーの神を参拝
ゴージャは7年もバグダッドに帰らなかった。
旅に出る前にゴージャは友人の商人に千枚の金貨をあずけた。
その友人は千米の金貨をつぼに入れて 上から オリーブ油をいっぱい入れしっかり 蓋をした。
長い間 預かっていた商人の夫婦は その千枚の金貨が欲しくなってつぼの中身を工作して金貨を隠した。ゴージャが 7年後にその商人人の家を訪れた時には、金貨 なんて知らない預かった覚えがないようなこと言われた。そして裁判しても無理と…
ーーー考察
この行為は「横領」になると思います。
1. 単純横領罪:
刑法252条に規定されており、自己が占有する他人の物を横領した場合に成立します。例えば、友人から借りた物を無断で売却する行為などが該当します。法定刑は5年以下の懲役です。
[刑 法]
第三十八章 横領の罪
(横領)
第二百五十二条 自己の占有する他人の物を横領した者は、五年以下の拘禁刑に処する。
2 自己の物であっても、公務所から保管を命ぜられた場合において、これを横領した者も、前項と同様とする
https://laws.e-gov.go.jp/law/140AC0000000045
〔2025/08/10〕
現代日本の裁判での位置づけ
(1)証拠の分類
物的証拠(物証)
油そのものやツボなど、事件に直接関係する物体。
例:現場に残された指紋、血痕、壊れた施錠、液体サンプルなど。
鑑定証拠(科学的証拠)
物証を科学的手法で分析した結果。専門家による意見書や鑑定書として提出される。
例:油の酸化度・成分変化を分析し、保存期間を推定する化学鑑定。
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2. 実際の立証の流れ(現代の例)
1. 押収
捜査機関が油の入ったツボを押収。
「証拠保全」のため封印・記録。
2. 鑑定依頼
科学捜査研究所(科捜研)や民間の化学分析機関に依頼。
分析項目:酸価(酸化の進み具合)、過酸化物価、水分量、成分分解の度合い。
3. 鑑定書作成
「通常のオリーブ油は常温保存で3年以内に劣化し、色・臭い・酸価に明確な変化が見られる」といった経験則+実験データを記載。
4. 法廷での証言
鑑定人(分析担当者)が証人として出廷し、科学的根拠を説明。
弁護側は反対尋問で「特殊な保存条件なら7年持つ可能性」を突くこともある。
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3. 適用される法的枠組み
刑事訴訟法
第179条(鑑定人)・第180条(鑑定の命令)で、裁判所や検察官が専門家に鑑定を命じられる。
証拠能力や証明力は、証拠調べの結果として判断される。
証拠評価の原則
日本は「自由心証主義」(刑訴法318条)を採用し、裁判官が全証拠を総合して判断。
科学的証拠は客観性が高く、特に物証と鑑定証拠が一致すれば有力な立証手段となる。
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4. 「つぼ裁判」的アプローチの現代版
当時の子供の推理 現代の対応
油は7年も美しく保たれない → 中身が入れ替わっている 鑑定で酸化度・劣化成分を測定し、保管年数を推定
油の状態から過去の行為を推測 科学的分析に基づき「いつ頃入れ替えられたか」を特定
推理を元に真相を暴く 鑑定結果+他の証拠で事実認定
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5. 現代の捜査で想定される具体例
食品偽装事件
→ 賞味期限切れ食品の成分分析で、保存期間を科学的に裏付け。
文化財窃盗事件
→ 油彩画の顔料・バインダーの劣化度から保管環境や年代を推定。
産業スパイ事件
→ 試作品や液体サンプルの化学分析で持ち出し時期を特定。
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まとめ
子供たちの「油の劣化推論」は、現代の刑事裁判でいう科学的鑑定証拠に相当。
刑事訴訟法179条・180条を根拠に鑑定が行われ、法廷で証人尋問を経て証拠評価される。
物的証拠+科学的証拠の組み合わせは、横領などの立証において極めて有効
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第四節 証拠
第三百十七条 事実の認定は、証拠による。
第三百十八条 証拠の証明力は、裁判官の自由な判断に委ねる。
https://laws.e-gov.go.jp/law/323AC0000000131
これも自由心証主義って言うんですね。
目からウロコでした。
自由心証主義は
民事訴訟法だけと思ってました。
ありがとうございました。🙏
とても勉強になりました。
ChatGPT-5先生
はい、そうなんです。😊
自由心証主義(じゆうしんしょうしゅぎ)は民事訴訟法だけでなく、刑事訴訟法にも明記されています。
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刑事訴訟法の場合
第317条:「事実の認定は、証拠による」
→ 裁判官が事実を認めるときは、必ず証拠に基づかなければならないという証拠裁判主義の規定。
第318条:「証拠の証明力は、裁判官の自由な判断に委ねる」
→ 証拠の重み(信用性・証明力)をどう評価するかは、裁判官が自由に判断できるという自由心証主義の規定。
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民事訴訟法との共通点と違い
項目 民事訴訟法 刑事訴訟法
規定場所 民訴法247条 刑訴法318条
趣旨 立証責任を負う当事者が提出した証拠の評価は裁判官の自由判断に委ねる 国家刑罰権行使のための事実認定も裁判官の自由判断に委ねる
制約 弁論主義など民事特有の制約あり 適正手続・被告人の権利保障など刑事特有の制約あり
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「つぼ裁判」とのつながり
もしこの物語を現代の刑事裁判に置き換えると、
油の鑑定結果(科学的証拠)は、裁判官が自由心証で「信じるかどうか」を判断
ただし、判断の根拠はあくまで証拠裁判主義に基づき、証拠調べで出てきた事実に限られる
つまり、子供たちの「7年は持たない」という推論も、現代の裁判では鑑定人証言や実験データとして提出され、それを裁判官が自由心証で評価する流れになります。
〔文書生成: ChatGPT-5とChatGPT-5Thiking先生〕
👩💼ありがとうございました。
〔2025/08/12〕
「裁判ごっこ」—科学的鑑定で読む
- 物証:壺・油・金貨の残痕
- 鑑定:酸価・過酸化物価・GC/MS・UV吸収(K232/K270)
- 条文:刑訴法317・318・179〜180、刑法252(横領)+60(共同正犯)
- 評価:「7年保管なら劣化痕」の一般則と保存条件の例外可能性を総合
子どもの「経験則」は、現代なら鑑定データで裏づける。— 物証×鑑定×人証 → 自由心証へ